病気や怪我で介護が必要にると、一時的に何がしたいのかすら分からなくなる人がいる。人は本来、尊厳を守りその人らしく生きていくために、さまざまな作業を選んで行うことで生活をしている。その作業の数は、簡単には数えられないほどだ。
介護に関わる職種の中で、主に利用者のリハビリなどを担う作業療法士は、作業療法のサービスを受ける利用者の作業すべてに対して支援が行えないことは理解しているものだ。しかし、最初はしたいことがないと言っていた人でも、一つ何か実現すると、次のしたいことが生まれくる。できないと諦めていたことができれば、これもできるかもしれないと考えれるからだ。しかし、作業療法士は医療や介護保険の枠組みで働いている職種であり、その範疇を超えるような作業に取り組むことはできない。保険内では、期間や時間、回数や頻度、行う場所まで指定がされているのだ。
そのため、作業療法士は全ての支援を行うことができないものの、利用者がリハビリに取り組んでいる間に、その人自身が自分でしたいことを実現する技術を身につけてもらうことをとても重要視することが大切である。自分の能力を適切に判断することや実現するために人と交渉すること、効果的に代弁してくれる人を見つけることなど、周囲の人と協働的に取り組んでいけるよう導いていくのだ。例えば魚1匹を与えるのでなく、魚の獲り方を教えることをコンセプトに作業療法を実践すると、利用者の尊厳を守ることにもつながる。そうすることで、利用者が自立した生活を送れるような支援が可能になる。